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住友不動産の子会社が「歩合制」を停止?不動産業界で広がる営業制度見直しの背景とは

不動産業界では昔から、営業成績に応じて報酬が増える「歩合制(インセンティブ制)」が一般的とされてきました。

しかし今回、住友不動産の子会社で営業制度の見直しが報じられたことで、あらためて「歩合制は本当に必要なのか?」という議論が注目されています。

この記事では、今回の話題をきっかけに、不動産業界における歩合制のメリット・デメリット、そしてなぜ今“廃止”や“見直し”の流れが出てきているのかをわかりやすく整理します。


そもそも不動産業界の「歩合」とは?

不動産会社の営業職では、契約を取った件数や売上に応じて給与とは別に報酬が支払われるケースがあります。
これがいわゆる「歩合」や「インセンティブ」です。

たとえば、

  • 売買仲介で契約を成立させた

  • 賃貸仲介で成約を取った

  • 管理物件を新たに獲得した

  • リフォーム工事や設備提案を受注した

といった成果に対して、一定割合の報酬が付く仕組みです。

営業会社ではよくある制度ですが、不動産業界ではこの歩合制が強く働くことで、時に大きな問題を生むこともあると言われています。


なぜ今、歩合制の見直しが注目されているのか

今回話題になったのは、住友不動産グループの会社に関連する報道をきっかけに、「歩合制の廃止」や「チーム営業への転換」が注目されたことです。

背景には、営業個人に強い成果プレッシャーがかかることで、不正や無理な提案が起きやすくなるのではないか、という問題意識があります。

不動産取引は金額が大きく、顧客・オーナー・入居者など関わる人も多いため、短期的な成果だけを重視した仕組みでは、どうしてもひずみが出やすい面があります。


歩合制のメリットは「頑張りが反映されやすい」こと

もちろん、歩合制そのものが悪いわけではありません。

歩合制の大きなメリットは、やはり結果を出した人が正当に評価されやすいことです。

営業としてバリバリ稼ぎたい人にとっては、固定給中心よりも納得感のある制度に感じられるでしょう。

また、

  • モチベーションが上がりやすい

  • 営業活動が活発になりやすい

  • 売上を伸ばす力がつきやすい

といった側面もあります。

実際、不動産・保険・金融などの営業職で歩合制が広く採用されてきたのは、こうした理由があるからです。


一方で、歩合制には大きなデメリットもある

ただし、歩合制が強くなりすぎると、営業担当者が「お客様のため」ではなく「自分の数字のため」に動いてしまうリスクがあります。

1. 無理な契約を取りにいきやすくなる

たとえば賃貸仲介で歩合が強く働くと、
「とにかく契約を決めたい」という意識が先行し、入居者に合わない物件を強引に勧めたり、オーナーに無理な条件変更を求めたりすることが起こりえます。

2. オーナーに不利益な提案が増える可能性がある

管理会社の現場では、リフォームや設備提案に歩合がついているケースもあります。
しかしこの仕組みは、必要以上の工事提案につながる恐れがあります。

本来は50万円で十分な工事でも、100万円の工事を通せば報酬が増えるとなれば、営業側の判断がゆがむ可能性は否定できません。

3. 不正の温床になりやすい

個人に案件が集中し、かつ成果がそのまま収入に直結する環境では、案件の囲い込みや情報のブラックボックス化が起きやすくなります。
それが極端な場合、不正やトラブルの温床になることもあります。


「賃貸仲介」や「工事提案」に歩合をつけない会社も増えている

今回の会話の中でも印象的だったのは、
「どこに歩合をつけるか」が会社の考え方を大きく表すという点です。

たとえば、ある不動産会社では、

  • 賃貸仲介の売上には歩合をつけない

  • リフォームや設備工事の受注にも歩合をつけない

  • 一方で、管理物件の獲得や入居率の改善には歩合をつける

という方針を取っているとのことでした。

これは非常に合理的な考え方です。

なぜなら、賃貸仲介や工事提案に歩合をつけると、どうしても“無理に決める”“過剰に提案する”方向に寄りやすいからです。
一方で、管理獲得や入居率改善に報酬を連動させると、社員の意識が「オーナーの利益をどう最大化するか」に向きやすくなります。


オーナーのためになるのは「契約件数」より「入居率」

不動産オーナーにとって本当に大事なのは、単発の契約件数ではなく、安定した入居率と適正な賃料での運用です。

仮に営業担当者が歩合欲しさに、

  • 相場より安い賃料で早く決めようとする

  • 条件交渉を無理に押し進める

  • 必要以上の工事を勧める

といった行動を取れば、短期的には契約になっても、長期的にはオーナーの収益を傷つける可能性があります。

その意味で、「何にインセンティブを与えるか」は、会社が誰のために動くのかを示す重要な指標だと言えるでしょう。


チーム営業への転換は、不正防止に効果があるのか

今回注目されたもう一つのポイントが、個人営業からチーム営業への転換です。

チーム営業には、以下のような効果が期待できます。

  • 案件情報を複数人で共有できる

  • 個人の独断で進めにくくなる

  • 不自然な契約や不正に気づきやすい

  • 顧客対応の質を均一化しやすい

つまり、個人プレーではなく組織で案件を管理することで、透明性を高める狙いがあります。

不動産業界に限らず、銀行などでも癒着防止や不正抑止のために定期的な異動が行われることがあります。

今回のように「地域をまたぐ異動」や「チーム制」がセットで語られるのは、そうしたガバナンス強化の文脈とも重なります。


ただし、歩合廃止が“万能”とは限らない

一方で、歩合制をなくせばすべてが良くなるとも言い切れません。

営業の世界では、成果が収入に反映されることをやりがいにしている人も多くいます。
そのため、歩合を完全に廃止すると、

  • 稼ぎたい優秀な人材が集まりにくくなる

  • 営業の推進力が落ちる

  • 「頑張っても評価されない」と感じる人が出る

といった課題も出てきます。

結局のところ、重要なのは「歩合をなくすかどうか」だけではなく、
どの業務に、どの程度、どんな思想で歩合をつけるのかです。


不動産会社に求められるのは「短期成果」より「長期信頼」

不動産は、売って終わり・貸して終わりのビジネスではありません。
特に管理会社であれば、オーナーとの信頼関係、入居者満足、収益の安定化といった長期視点が欠かせません。

だからこそ、これからの不動産会社には、

  • 現金の直接授受を減らす

  • 個人営業に依存しすぎない

  • 情報共有を徹底する

  • 顧客本位になりにくい報酬設計を見直す

といった仕組みづくりがより重要になっていくはずです。


まとめ|歩合制の見直しは、不動産業界の健全化につながる可能性がある

住友不動産の子会社に関する話題をきっかけに、不動産業界の営業制度に再び注目が集まっています。

歩合制には営業力を引き出す強みがある一方で、
使い方を間違えると、オーナーや入居者の利益よりも“数字”が優先される構造を生みかねません。

そのため、今後は単純な成果主義ではなく、

  • 管理獲得

  • 入居率改善

  • チームでの案件管理

  • 不正が起きにくい仕組みづくり

といった方向に制度設計がシフトしていく可能性があります。

不動産業界がより健全で、オーナー・入居者・社員の三者にとって納得感のある形に進んでいくのか。
今回のような動きは、その一つの転換点として注目されそうです。